ダイヤモンドラッシュに沸いた鉱業都市・キンバリー
巨大な穴・ビックホール
南アフリカのキンバリーに「ビックホール」と呼ばれる巨大な穴があります。
穴の直径は約500m。深さは365m。周囲は1.6km。人の手によって掘られた穴としては世界で最大のものと言われています。
この穴は、19世紀にダイヤモンドを採掘するために掘られた穴で、当時のキンバリーはダイヤモンドラッシュに沸いていました。
露天掘りのこの穴は、現在のように重機などは使われることはなく、すべて人海戦術によって掘られました。1871年の採掘開始から1914年に閉山となるまでの40年ほどで、実に2000トン以上もの土砂が掘り出されたそうです。この間にここで採掘されたダイヤモンドは、2.7トンにのぼると言われています。
この穴の採掘開始当初は、鉱山が細かく区画分けされていて、1区画ごとに採掘権を買う方式がとられていました。後に世界のダイヤモンド産業の頂点に立つデビアス社の創業者・セシル・ローズがこの地に来たときには、3600の区画があったそうで、実に3万人もの採掘者がいたといわれています。
ダイヤモンドが掘られることのなくなった現在の「ビックホール」は、地下水や雨水が溜まって湖のような姿になり、南アフリカを代表する観光名所になっています。
キンバリーの賑わい
さて、ダイヤモンドラッシュ以前のこの地は荒野でしたが、ダイヤモンドの噂が広まると、一攫千金を狙う採掘者たちが次々に押し寄せてくるようになり、次第に街になっていきました。この街は、イギリス植民総督のキンバリーにちなんで「キンバリー」と名づけられました。
それまで牧畜や農業が主な産業だったこの地の経済は、ダイヤモンドラッシュ以後、一変することとなり、鉱業が中心となったのです。
当時のキンバリーの街には、宝飾店、舶来品等の高級品店やバーなどが立ち並んでいたそうで、一攫千金を実現した鉱夫たちで賑わったようです。
キンバリーでは、採掘の容易な表層近くのダイヤモンドはあっという間に掘りつくされました。地下深くを掘らなければならなくなったこの地のダイヤモンド採掘は、個人採掘者の手には負えない状況になります。そして多くの鉱床が鉱山会社に買われ、採掘の中心は大型掘削機械を持つ鉱山会社にシフトしていったのです。
前述のデビアス社の創業者であるセシル・ローズもそうした鉱山所有者のひとりです。セシル・ローズは、次々に付近の鉱山を買収し、10年ほどの期間でキンバリー最大の鉱山所有者になっていました。これが、現在も世界最大のダイヤモンド関連企業であるデビアス社の始まりだったのです。