ダイヤモンドの輝きを最も引き出すカット「ラウンドブリリアント・カット」
ダイヤモンドカット職人の息子で数学者だったトルコフスキー・マーセルが、1919年に発表した『ダイヤモンドデザイン ~ダイヤモンドの中の光の反射と屈折の研究~』によって体系づけられたラウンドブリリアント・カットは、現在でもダイヤモンドカットのスタンダードです。
この中でトルコフスキー・マーセルは、ダイヤモンドの輝きを最も引き出すカット形状(プロポーション)の計算式を示しました。この計算式の正確性は、後に実験によっても確認されています。
ジュエリーに適したダイヤモンドの原石は八面体の結晶です。この原石の状態のダイヤモンドには、輝きはまだありません。これにカットを施していくことで、あの美しい輝きを導きだしていくのです。
ダイヤモンド原石を大小2つに切り出す
ラウンドブリリアント・カットの工程で最初に行うことは、マーキングと呼ばれる作業です。ダイヤモンドの原石を切り出す(ソーイング)際の目安になる線を、原石の表面に書く作業が、マーキングです。
できるだけ原石の無駄が少ないカットになるようにマーキングするのですが、この際、内包物の大きさや位置なども考慮に入れます。
次の作業がソーイングです。油とダイヤモンドのパウダーを混ぜてつくった研磨剤を塗った銅の刃で、マーキングに沿って原石を切断します。この作業には5時間程度の時間を要します。これでダイヤモンド原石は、大小2つに切り分けられました。
続いて行うのが、ガードリングという作業です。ダイヤモンド原石の角を研磨して外縁を丸くしていく作業がガードリングです。ソーイングしたダイヤモンド原石を高速回転させながら、別なダイヤモンドを横から擦り付けることで、少しずつ形を整えていくのです。
58のファセットをつくりだす
次にポリシングという作業に入ります。ラウンドブリリアント・カットの最大の特徴である58の面をつくりだす作業がポリシングです。ひとつひとつの面のことを「ファセット」といいます。58のファセットは研磨することでつくりだしていきます。
最後に最終チェックと洗浄を行います。いよいよラウンドブリリアント・カットの最終段階です。
クラウン(ダイヤモンドの上側)、パビリオン(下側)、ガードル(上下の境い目)など全ての部分の仕上がり具合をよく確認します。
チェックが終わったダイヤモンドは洗浄します。カットされたダイヤモンドには、ダイヤモンドパウダーなどが付着していますので、これを洗うのです。熱した硫酸でダイヤモンドを煮ることで洗浄を行います。
これで美しく輝くラウンドブリリアント・カットのダイヤモンドが完成です。