「ハートを射止める」として人気の「ハート&キューピッド(H&C)」

ラウンドブリリアントカットを施されたダイヤモンドの中には、「ハート&キューピッド(H&C)」と呼ばれるものがあります。
ジェムスコープという特殊なスコープを使って「ハート&キューピッド」のダイヤモンドの内部を、下部側(パビリオン)から覗くと、8個のハート模様を見ることができます。さらに上部側(テーブル)から内部を覗くと、今度は8本の矢(アロー)のような模様を見ることができます。
こうした模様は、シンメトリー(対称性)に優れたカットが施されているダイヤモンドにのみ現れる現象です。カット面を均一な形状と大きさに仕上げなければ、こうした模様がは現れることはありません。
「ハート&キューピッド」のダイヤモンドを持つということは、最高レベルのカットを施されたダイヤモンドを身に着けるという喜びがあります。また、日本では「ハートを射止める」という意味で、特に婚約指輪として人気の高いダイヤモンドでもあります。
しかし注意する必要があるのは、ダイヤモンドのカット評価は、シンメトリー(対称性)だけではない、という点です。GIA(アメリカ宝石学協会)が定めるダイヤモンド品質の国際評価基準「4C」では、カットは「プロポーション」、「ポリッシュ」、「シンメトリー」の3項目を評価します。
「ハート&キューピッド」のダイヤモンドは、このうち「シンメトリー」の優れているものに現れる現象ですから、それ以外の要素が高くない可能性もあるわけです。
「4C」におけるカットのグレードは、評価の高い順から、「EXCELLENT(エクセレント)」、「VERY GOOD(ベリーグッド)」、「GOOD(グッド)」、「FAIR(フェア)」、「POOR(プア)」の5段階ですが、「ハート&キューピッド」のダイヤモンドであるにもかかわらず、カットグレードが2番目の「VERY GOOD(ベリーグッド)」だったというようなことも少なくないようです。
さらに注意すべき点は、「ハート&キューピッド」は正式なカットグレードではないということです。
ですから、GIA(アメリカ宝石学協会)の発行するダイヤモンドの鑑定書には「ハート&キューピッド」ということが記載されることはありません。
「ハート&キューピッド」であることが明記されているのは、一部の機関が発行する鑑定書のサブレポートです。
「4C」におけるカットの評価項目である「プロポーション」、「ポリッシュ」、「シンメトリー」の3項目がともに最高評価の「EXCELLENT」のダイヤモンドを、特に「トリプルエクセレント(3Excellent)」、「3EX」と呼びますが、「ハート&キューピッド」の「3EX」というダイヤモンドが、まさに最高レベルのカットを施されたダイヤモンドということになるでしょう。