世界のダイヤモンド産業の頂点に立つデビアス社
世界のダイヤモンド産業において、南アフリカのデビアスという会社の存在は極めて重要です。 デビアス社は巨大なシンジケートを構築し、一時は世界のダイヤモンド市場をほぼ完全に独占したほどの巨大企業です。
圧倒的なデビアス社の支配力
1888年に南アフリカのセシル・ローズ氏が創業したデビアス社は、ユダヤ系財閥であるロスチャイルド家の資本を後ろ盾に、南アフリカのダイヤモンド鉱山を次々に傘下に収め、世界のダイヤモンド原石を集約することに成功しました。19世紀末には、その当時存在が確認されていたダイヤモンド鉱山の実に90%をデビアス社が支配していたといわれます。
その後には、ダイヤモンド原石の生産だけでなく、流通や小売りの分野にも参入し、世界のダイヤモンド販売会社なども次々に買収、支配下に収めていきます。このようにしてデビアス社は巨大なシンジケートを構築し、世界のダイヤモンド産業の支配者的な立場に立ったのです。
CSO(中央販売機構)とデビアス社
現在、デビアス社の市場シェアは5割ほどになっているようですが、依然としてダイヤモンド業界に強大な影響力を持つ企業であることに変りはありません。
今でもダイヤモンド原石の多くをデビアス社が生産しているわけですが、この原石はデビアス社のダイヤモンドを集中的に販売する組織「 CSO (中央販売機構)」によって、世界のダイヤモンド業者に分配されます。
原石の販売は、「サイト」と呼ばれる販売会のような形式で行われているのですが、この「サイト」には、デビアス社が認定した「サイトホルダー」という資格を持つ業者のみが参加を許されています。「サイトホルダー」の認定は、誰もが受けられるものではなく、デビアス社が一方的に認定します。「サイトホルダー」の認定を受けている業者は、現在100社にも満たないようで、そのうち日本企業は1社のみです。
買うか、買わないか「オール オア ナッシング」
「サイト」は、イギリス・ロンドンにある「 CSO (中央販売機構)」の本社で、年間10回ほど開催されますが、その販売方法は極めて特殊です。
「オール オア ナッシング」なのです。
デビアス社から「サイトホルダー」に、ダイヤモンド原石の詰まった袋が渡されます。「サイトホルダー」は、これを袋ごと買うか、買わないかの選択しかできません。袋の中の原石から気に入ったものだけ選ぶ、というようなことは許されないのです。業者は「必要な石だけ買う」、あるいは「多目に買っておく」ということはできないわけです。
買わない選択はできるのですが、頻繁に購入を拒む業者は、「サイトホルダー」の認定を取り消されてしまいます。
このような独特な手法でデビアス社は、ダイヤモンドの供給量と流通量をコントロールし、世界のダイヤモンドの価格を安定させているのです。