圧倒的な支配力を持ったデビアス社の仕組み
ダイヤモンド産業の世界を長年支配してきたのは、南アフリカのデビアス社です。 デビアス社は、ダイヤモンド原石の採掘から流通の段階に至るまで強力なシンジケートを構築し、工業用を除く世界中のダイヤモンドの供給量と流通量をほぼコントロールしてきました。
産出したダイヤモンドを一括買い上げ
ダイヤモンド原石の生産の段階では、「DPA (ダイヤモンド生産者組合)」と呼ばれる生産者の組織がつくられ、ここで生産調整が行われています。余分な量のダイヤモンドが市場に出回らないようにするために、産出量を調整するのです。
次の段階では、「DTC (ダイヤモンド貿易会社)」と呼ばれる組織が、 DPAの産出したダイヤモンド原石を一括して全て買い上げてしまい、分類等を行います。DPAに加盟する鉱山から産出されたダイヤモンド原石の全てが、ここに集められるわけです。
異議を唱えることもできない仕組み
そして、DTC に集められたダイヤモンド原石は、「CSO(中央販売機構)」と呼ばれる販売組織から世界に売られていくのです。 驚くのは、CSOからダイヤモンド原石を購入できるダイヤモンド関連業者は、世界中に100社にも満たないということです。デビアス社から選ばれた、一握りのわずかな業者のみが、デビアス社の関係するダイヤモンド鉱山から採掘されたダイヤモンド原石を買うことができるという仕組みになっているのです。 販売価格も、各業者に対する原石の割り当て量も、全て CSOが決めてしまいます。業者は異議を唱えることすらできません。
圧倒的なデビアス社、今後は…
こうした、圧倒的にデビアス社に有利な仕組みは、今日においてもあまり変らずに継続されているのですが、この仕組みの存在こそが、ダイヤモンドの価値が一定に保たれ、末端価格に至るまで大きな価格変動がおこらない要因なのです。
鉱山の段階で採掘するダイヤモンド原石の量を調整し、掘られた原石は見ず知らずの者には売らない。売り先への販売価格も販売量もコントロールする。
この仕組みが「ダイヤモンドの価格は長期的に上昇する」という安心感を世界中の人々に与えているわけです。
しかし近年では、デビアス社の傘下にない新たなダイヤモンド鉱山が、ロシア、オーストラリア、カナダ、中国などで発見されています。こうしたことから、デビアス社は、シンジケートの統治を緩め、より消費者に近い商流での事業の展開はじめています。ルイ・ヴィトンとの協業によるブランドビジネスや、「DTC」というブランド名での高級ジュエリーブランドの展開などです。