人工着色のファンシーカラー・ダイヤモンドとは?

ダイヤモンドの人工加工とは?
ダイヤモンドをはじめとする宝石は天然のものですが、何らかの人工的な加工を施したものも「天然石」として販売されています。例えばルビーやサファイアなどの天然石に加熱処理を加えて本来の色を引き出す「加熱処理」や、エメラルドなどにワックスや着色液を宝石にしみ込ませる「含浸(がんしん)加熱処理」といった方法があります。ダイヤモンドの場合は細かい傷をガラスなどで埋めて修復する「充填(じゅうてん)処理」という加工を行います。こういった人工的な加工を「トリートメント」と呼びます。
では、ダイヤモンドの色に関してはどうでしょうか?ダイヤモンドの場合は放射線を照射することで、内部の結晶構造を変化させる「照射線照射処理」という方法を取ります。これはダイヤモンドがエックス線を浴びると蛍光を発する性質を生かしているのです。この方法が考案されたのは1904年ごろといわれています。
実は産出されるダイヤモンドの中でもっとも多いのは、無色ではなく褐色です。無色透明のダイヤモンドは価値が高いというのは、それだけ数が少ないからです。そこで大量に採れる褐色のダイヤモンドに加工を施してファンシーカラー・ダイヤモンドにしようという研究が続けられたのです。放射線照射処理法を考案したのはイギリスの科学者ウィリアム・クルックスで、褐色のダイヤモンドにラジウム線をあてたところ、濃いグリーンに変化しました。日本では1980年ごろから実施されています。
今では元々色を持って産出されたダイヤモンドを「ナチュラルダイヤモンド」と呼び、このように何らかの処理を施したものを「トリートメントダイヤモンド」と呼んでいます。
人工加工の見分け方
放射線照射を施したダイヤモンドは、分光光度計を使えばすぐにバレてしまいます。天然の色かどうかが、見破られてしまうのです。ただし、グリーンやブルーグリーンなどのグリーン系は判別が難しいといわれています。その理由は、自然界にも放射線があり、特にグリーン系はその影響を受けやすいからです。
また、ダイヤモンドの人工着色にはダイヤモンドに薄い膜をコーティングする方法もありますが、これは膜がはがれるという難点があります。もちろん、色が落ちてしまうので、色をつけたことがバレてしまいます。
そこで、もうひとつの方法をご紹介しましょう。それが「高温高圧プロセス」というものです。天然のダイヤモンドは地下深くで結晶になります。そこは高温でかつ高圧の環境です。そこでできた結晶がマグマの噴出で急激に地上に出てきます。それと同じ環境を人工的に作ることで、ダイヤモンドの色を変化させようという方法なのです。高温高圧をかける特殊な装置も開発されています。つまり、褐色のダイヤモンドを地下に戻して生まれ代わらせる方法で、HPHTプロセスと呼びます。この処理の過程で窒素を多く含むと黄色系になり、ホウ素を含むとブルー系のダイヤモンドになります。この処理は天然の色かどうかの識別が難しいのですが、近年は検査法が進化して識別できるようになりました。鑑定書の色の起源(カラーオリジン)という欄にはHPHTプロセスと記されていますので、よく見てみましょう。2003年からはGIAでは人為的に処理されたカラーダイヤモンドに対しては鑑定書に色の起源を明記するようになっています。どんな加工をしているかを確かめるといいですね。