時計のオーバーホール(分解掃除)について徹底解説!

2015年12月11日

オーバーホールイメージ

ロレックスなどの高級時計をお持ちの方は、一度でもオーバーホールという言葉を聞いたことがあると思います。
オーバーホールとは分解掃除のことで、時計の内外部を元通りに戻す一種のメンテナンスです。

どのような工程で行われるのか、なぜオーバーホールをする必要があるのか、ということ詳しくご説明いたします。

オーバーホールとは

オーバーホールとは、いわゆる時計の状態を“元通り”に戻すメンテナンスのことを言います。

時計内部には様々な部品が複雑に配置され、それらの部品が互いに作用することで稼働していますが、経年使用により部品と部品に摩擦が生じ、潤滑油が劣化すると共に酸化が始まります。
油が切れると摩擦力が増大するため、各部品や時計自体の寿命が短くなってしまいます。時計の内部に潤滑油を追加して、同時に劣化部品の交換や内外部の洗浄、外部の研磨などを行うことで“新品同様”の状態に戻すことができます。
この作業のことをオーバーホールといいます。

なお、電池で動くクォーツ時計はオーバーホールをしなくても良いと考える人がいますが、機械式と比べて劣化速度は遅いものの、潤滑油の劣化やサビによって寿命が短くなってしまうため、クォーツ時計も定期的なオーバーホールが必要です。

オーバーホールの作業工程

1.分解
外観、運針、防水、操作性、精度、残留磁気、電気特性などの状態を確認した後、ケースを分解します。
この際にも、サビの発生箇所、バネ棒の状態など、さまざまな点において状態を確認し、内部の部品を1つ1つ分解していきます。
摩擦による各部品の劣化具合や油切れなど顕微鏡を用いて細かくチェックし、状態に応じて交換が必要な部品やムーブメントの全分解などを検討します。
2.洗浄
分解された各部品を特殊な機械を用いて洗浄します。
洗浄は専用の薬品を使用して3~4回繰り返されるため、各部品に付着した細かい汚れが綺麗に落ちます。
なお、ケースやブレスレットも同時に洗浄され、経年使用による汚れやサビが落ち、外観的に新品同様の状態に戻ります。
3.組立て・注油
洗浄が終わると組立て工程に移ります。
劣化が進んでいる部品は、この時に新品のものに交換して1つ1つ組み上げていきます。その過程で部品の間に潤滑油を注いでいきます。
注油の量はモデルごとに異なり、さらに動作頻度の少ない部品には高粘度、動作頻度の多い部品には比重の低い油というように適切な油を使用しなければならないため、簡単そうにみえる注油でも、実は豊富な知識と経験が必要とされます。
4.タイミング調整
注油・組立ての次はタイミング調整を行います。タイミング調整とは、時計の精度を調整することです。
精度を調整するのは非常に難しく、この工程を適切に行えるかは作業者の経験にかかっているといえます。
タイミング調整の後は、テスターで日差0~+5秒ほどの精度が出ているか確認します。
これが終わるとムーブメントやリュウズの取り付けなど、本体部の最終的な組立て行います。
5.最終仕上げ
総仕上げとして、防水検査やゼンマイの巻き上げ精度などの最終チェックを行い、ケースやブレスレットの研磨に取り掛かります。
研磨を行うことで細かな傷が消え、外観が綺麗な状態に戻ります。
研磨の後にブレスレットを取り付け、最後に外観、機能、操作性など初めに確認した事項の再チェックを行い、問題がなければこれでオーバーホールの工程が終わります。

故障させないために

内部の各部品の劣化は経年使用によるものだけではなく、直接的な原因によって劣化を進めてしまうことがあります。その原因というのは、汗や化粧品によるサビです。

ロレックスの時計は防水性能に優れているため、そう簡単に汗や化粧品が内部に侵入することはありませんが、外傷などによって侵入することがあります。
サビがひどい場合には、オーバーホールをしても元の状態に戻すことができない可能性がありますので、定期的な手入れが必要不可欠です。

オーバーホールは時計を長く愛用していくために不可欠な作業ですので、定期的に行うようにしてください。
また、ご自身による日々のメンテナンスも重要ですので、故障させないように使用後は汗や化粧品などを拭く習慣をつけてくださいね。