ダイヤモンド産業をコントロールする巨大シンジケート
世界のダイヤモンド産業界で圧倒的な地位を占めている企業があります。1881年に南アフリカでセシル・ローズが設立したデビアス社です。
原石のシェア90%を独占したデビアス社
セシル・ローズは、ユダヤ系財閥であるロスチャイルド家の支援で、ダイヤモンドラッシュに沸いていた南アフリカ・キンバリー周辺のダイヤモンド鉱山を次々に買収することに成功しました。当時は、世界のダイヤモンド流通量の実に90%が、デビアス社の鉱山から産出されていました。
デビアス社は、ダイヤモンドの供給源を独占することで、ダイヤモンドの価格を安定させようとしたのです。
しかしセシル・ローズが亡くなった年でもある1902年、ダイヤモンドの歴史を変えるほどの鉱山が、トーマス・カリナンによって発見されます。プレミア鉱山(現カリナン鉱山)です。この鉱脈は巨大なもので、デビアス社の所有していた全鉱山の産出量と、ほぼ同じ量のダイヤモンドを産出しました。
このプレミア鉱山からは1905年に、3106カラット(621.2g)という史上最大のダイヤモンド原石が採掘され、プレミア鉱山の所有者・トーマス・カリナンにちなんで「カリナン」と命名されました。
ダイヤモンドの巨大シンジケートの誕生
その後にも大鉱脈がいくつか発見され、デビアス社のシェアは大幅に低下、ついには40%ほどにまでなってしまいました。
こうした状況にあったデビアス社を次の段階へ進めたのは、ドイツ系ユダヤ人のオッペンハイマーでした。
オッペンハイマーは、1926 年にデビアス社の役員になり、1930年にデビアス社の会長に就任した人物です。オッペンハイマーは、ロスチャイルド財閥の支援を受けて、世界の貴金属、非鉄金属、ウランなど生産を支配するオッペンハイマー財閥を構築していました。
このオッペンハイマーが手がけたのが、ダイヤモンド生産者組合(DPA )、ダイヤモンド貿易会社(DTC)、中央販売機構(CSO)の創設です。
ダイヤモンド生産者組合(DPA )は、ダイヤモンドの生産調整を行います。それをダイヤモンド貿易会社(DTC)が一括して買い上げます。集められたダイヤモンド原石は中央販売機構(CSO)が売却します。
このシンジケートにより、世界のダイヤモンド原石の80~90%が、デビアス社の支配下になりました。ダイヤモンド原石が欲しければ、デビアス社を通す以外に方法がないというような状況の構築に成功したのです。
こうしてデビアス社は、今でも世界のダイヤモンド産業をコントロールする巨大シンジケートとして君臨しているのです。