世界最大のダイヤモンド原石「カリナン」

世界最大のダイヤモンド原石は、1905年に南アフリカのカリナン鉱山(当時の名前はプレミア鉱山)で発見された「カリナン」という石です。大きさは3106カラット(621.2g)。長さ101mm、高さ63.5mm、幅50.8mm。
鉱山の所有者であったトーマス・カリナンの名前にちなんで「カリナン」と命名されました。
この原石が採掘された時、現場の鉱夫は、あまりの大きさに誰かがイタズラをしてガラスを埋めておいたものと思ったそうです。
それ以前の世界一大きなダイヤモンド原石は、1893年にヤーヘルスフォンテーン鉱山で発見された「エクセルシア」で、大きさは970carat (190g)です。カリナンの大きさが桁外れであることがわかります。鉱夫が勘違いするのもわかる気がします。
イギリス国王・エドワード7世に献上されたカリナン
当初カリナンは、ヨハネスブルグとロンドンで展示されていました。あまりに高価であったため、すぐには買い手がつかなかったようです。
しばらくしてカリナンは、南アフリカのトランスヴァール政府に買い取られます。トランスヴァール政府は1907年、66歳の誕生日を迎えたイギリス国王・エドワード7世に、カリナンを献上しました。
さて、カリナンをイギリスに輸送する際には、ある作戦がとられました。盗賊からカリナンを守る必要があったのです。
カリナンを輸送するとされていた船は厳重な警備の下、ロンドンに向かいました。しかし、この船に積まれたのはダミーの石。このダミーは輸送中に何度か盗難の危機にあったそうです。
さて、本物のカリナンはというと、何の変哲もない普通郵便でロンドンに送られたということです。
無事エドワード7世の手に届いたカリナンは、オランダ・アムステルダムにあるアッシャー社にカットを委ねられました。当時アッシャー社は、ダイヤモンドの研磨技術の高さで世界最高と評価されていた会社です。
アムステルダムのアッシャー社へのカリナンの輸送にも、ユニークな作戦が取られました。
その時カリナンの輸送は、イギリス海軍の駆遂艦が担当すると発表されましたが、駆遂艦に積まれたのはやはりダミー。
本物はなんと、アッシャー氏がポケットに入れて船と汽車を乗り継ぎアムステルダムまで運んだということです。
カリナンのカットは、アッシャー社に20年勤めるアンリ・コーが担当することになりました。アンリ・コーは、アッシャー社の中でも最高の腕を持つと賞賛されていた研磨職人です。
気を失った世界最高の研磨職人
アンリ・コーは、まず原石を大きく2つに割ることを決断しますが、イギリス国王が所有する世界最高のダイヤモンドを割るという作業には、極度の緊張を伴ったようです。
アンリ・コーは、原石を割る一撃を加えたその瞬間、気を失って倒れてしまったと言われています。
目を覚ましたアンリ・コーは、綺麗に二つに割れた原石を目にすると、今度はホッとしたのでしょうか。再び失神してしまったのだそうです。
アッシャー社はカリナンのカットのために特注の研磨機材を用意していました。その研磨作業は3人の研磨職人が担当し、1日14時間働いて8ヶ月かかったと言われています。
こうしてカリナンは、合計で1063カラットの9個の大きな石と、96個の小さな石に切り出されました。
大きな石9個には、大きさの順にそれぞれカリナンⅠ~Ⅸと名がつけられましたが、このうちカリナンⅠは「ザ・グレート・スター・オブ・アフリカ(偉大なアフリカの星)」と呼ばれ、530.2カラットの大きさを誇っています。
残りの8個は「レッサー・スター・オブ・アフリカ」と呼ばれていて、カリナンⅡが317.4カラット、カリナンⅢは94.4カラット、カリナンⅣは63.6の大きさがあります。